「容疑者Xの献身」の登場人物・石神から見る映画のおすすめポイント
映画「容疑者Xの献身」の実写化が決定し石神役を堤真一が演じると発表された時、違和感を持った人も多かっただろう。なぜかというと、原作の石神は丸顔で髪の薄い中年男として描かれており、長身でイケメンの堤とはイメージがかけ離れているからだ。そのため、公開前は冴えない風貌の石神を堤がどう演じるのか注目された。
堤は石神の雰囲気に近づくため、撮影前に自分の髪を抜いたという。メイクの効果もあったとはいえ、ボサボサの髪、下向きの視線、寡黙な石神の雰囲気をうまく醸し出していた。そして、ラストシーンでは体全体で悲しく苦しい気持ちを表現し、観る人を感動の渦に巻き込んだ。このキャスティングは大正解だったのである。
「容疑者Xの献身」の石神が関わる見どころポイント!
① 人生に絶望した石神が首つり自殺をしようとしていた時、偶然にも靖子と娘の美里が引っ越しの挨拶に訪れるシーン。石神がドアを開けると、光り輝くように見える靖子が立っており、暗い心に光が差す存在になることを示している。
② 捜査が難航する富樫殺害事件に捜査協力を依頼された湯川は、石神と久しぶりに再会して会話するシーンがある。その中で、石神が「湯川、お前は相変わらず若いな。うらやましい」とつぶやく。今まで、容姿を気にしなかった石神の変化に湯川は驚き、誰かに恋していることに気づく。その相手は花岡靖子であると知った湯川が、石神と殺害事件との関係を疑うきっかけになる。
③ 留置場で四色問題を解く石神のシーン。靖子を守り切ったと信じる石神は、留置場の天井を黒板にして、四色問題について考え始める。四色問題とは1800年代から論じられている数学の証明問題で、多くの数学者が挑んできた難問である。難問を考える石神の眼は少年のようにキラキラしており、彼の数学的才能が惜しまれる。理数系の間では有名な四色問題だが、容疑者Xの献身の影響により一般人にも知られるようになり話題になった。
④ 全ての罪を被って自首した石神だったが、靖子の行動を知り「どうして」と叫びながら泣き崩れるシーン。石神の気持ちを思うと切なくて胸が張り裂けそうになるシーンだが、観客の間では靖子の行動が罪の重さに耐えかねたからという説と石神の愛を拒否したという説に分かれる。劇中で最高に盛り上がるシーンなので、ぜひ観て欲しい。
⑤ 事件解決後、内海刑事が「花岡親子は石神にとって生きる希望だったんですね」とつぶやくシーン。このセリフには、罪を犯してしまった石神の思いがすべて集約されていると言える。
石神を引き立てる湯川の苦悩
湯川はどんな事件でも常に冷静な態度を崩さないが、容疑者Xの献身では苦悩する姿が描かれている。それは、湯川が石神の才能を正当に評価しているただ一人の人物であり、純粋で優しい男だということも知っているからだ。「容疑者Xの献身」は変人と呼ばれる湯川の人間らしい一面が伺える映画となっている。