共感度100%のNetflix「カーゴ」で淡々と描かれる「父親」の覚悟とその表現力
ゾンビ映画でありながら“父親と娘の物語”に徹している「カーゴ」は、実際に子どもを持っている人が観ると、より深く共感できる映画といえます。また、ヒューマンドラマやロードムービーの要素が強いので、ホラー映画が苦手な方でも感動ストーリーとして楽しむことができるでしょう。
「親の子どもへの愛」という普遍的なテーマを異色のかたちで描いた「カーゴ」。実際に作品の中で表現する“父親の愛”を主人公アンディ目線でみるとその思いが伝わってきます。
この「カーゴ」の原作になったフィルムは7分という究極の短さ、しかもセリフなしで父親の愛を表現しています。(これ↓↓)
Netflix「カーゴ」あらすじ
人間をゾンビ化させるウイルスが蔓延し、社会が崩壊したオーストラリア。中年男性のアンディ(マーティン・フリーマン)は、妻のケイ(スージー・ポーター)とまだ赤ん坊の娘ロージーを連れて、川の沖合の船を安全地帯にして暮らしていた。
ところがある日、漂流ボートから物資をとろうとしたケイがボート内にいたゾンビに噛まれ、感染してしまう。アンディたちは船を捨てて地上に上がり、治療法を求めて陸地を移動するが、奔走むなしくケイは発症し、今度はアンディが噛まれて感染してしまうのだった。
自分が発症するまでの48時間のタイムリミットが迫る中、アンディはロージーを連れて旅をしていく。ところがなかなかロージーを任せられる人物や村・町は見つからず、時間だけが刻一刻と過ぎていく。
「カーゴ」の表現①:主人公アンディの視点でほとんどが進むストーリー
「カーゴ」のストーリーは、ほとんどが主人公アンディの視点で展開していきます。画面には常に彼の姿があって、彼が誰と出会い、どんな行動をしたかを辿るのがこの映画の本筋です。
広大なオーストラリアで人気のない場所を中心に逃げるということで、ゾンビ映画ながらゾンビはそれほど登場せず、ロージーを任せられる人物を探してさまようアンディと、彼が出会っていく生存者たちとの交流が一番の見どころとなっています。
崩壊した世界を生きる生存者たちは、暴力と欲に溺れていたり、妻子を抱えながらアンディと同じような境遇にあったり、一人で淡々と静かな生活を続けていたりと、人それぞれです。
アンディの視点からそんな世界を見渡すことで、視聴者の私たちも、リアルな文明崩壊の世界観に浸ることができます。
「カーゴ」の表現②:平凡な父親の「覚悟」と心情の変化
ストーリー的には淡々としている「カーゴ」ですが、その中で一番大きく変化が起きていくのが、主人公アンディの心情です。
妻が発症し、自分まで感染してしまうという残酷な現実の中、アンディは即座に「自分が発症する48時間以内に娘を託す人を見つける」と覚悟を決めます。
そこからの彼の変化は凄まじく、どちらかというと気弱な雰囲気だったアンディが、時には暴漢に立ち向かい、発症のときが近づくと「自分の目の前に肉を固定して、ゾンビ化した自分が肉につられて歩き続けるようにする」という状態を作ってまで、ロージーを伴って歩こうとします。
「自分の死」という恐怖に臆することなく「娘が生き延びる」ためにひたすら突き進んでいくアンディの「覚悟」が、この映画の一番のポイントと言えるでしょう。
異色のゾンビ映画「カーゴ」をぜひ一度ご覧あれ~。