ドキュメンタリー「イカロス」で描かれるドーピングの実態
Netflixオリジナルドキュメンタリーの「イカロス」は、もともとドーピングをして自転車レースで優勝できるかということを実験するドキュメンタリーです。しかし途中でドーピングに協力してくれたグリゴリー・ロドチェンコフがロシアで捜査対象になってしまいます。
そこから急激に内容が変わっていった「イカロス」ですが、番組の中でロドチェンコフが実際に行ったロシアのドーピングについて詳しく証言していました。
今回は「イカロス」が暴いた真実について見ていきたいと思います。
なお、ロシアはこのドーピング問題により2016年のリオオリンピックでは出場停止、2017年の冬の平昌オリンピックではOAR(Olympic Athlete from Russia)として出場しています。
ロシアのドーピングを最初に暴いたドイツとWADAの捜査
監督でアマチュアの自転車レーサーでもあるブライアン・フォーゲルは、ロシアのアンチドーピング機関所長グリゴリー・ロドチェンコフの指示を受けながら自転車レースで優勝するためにドーピングを行っていました。その実験の最中にドイツのテレビ番組が、ロシアがソチオリンピックでドーピングを行っていたことを放送したのでした。
その番組をきっかけに世界アンチドーピング協会(WADA)が捜査に乗り出しました。アンチドーピング機関の所長でもあるロドチェンコフはWADAに捜査されることになります。尋問を受けたり、行動を監視されたりと自由に動けなくなっていきました。もちろんロシア側はこの事実を否定します。
しかしこの頃からロドチェンコフは自分の命の危険を感じ始めたのでした。
身の危険が迫るロドチェンコフ
ブライアン・フォーゲルの力を借りてアメリカに渡ることができた、ロドチェンコフですが、妻や子供をはロシアに残していました。家族のことを心配しながらもアメリカで無事に暮らしているロドチェンコフにニュースが届きます。それはアンチドーピング機関でともに働いていた友人が謎の死を遂げました。
ニュースでは心臓発作と言っていましたが、ロドチェンコフは友人から心臓が悪いなんて聞いたことがなかったと言います。この事件により自分の命の危険性をさらに感じたロドチェンコフはついに自分が関与していたドーピングに関して証言をすることに決めたのでした。
ロドチェンコが明かしたドーピングの手口
ロドチェンコフが証言した内容はソチオリンピックでロシアが行ったドーピングの手口でした。
ドーピングを検査する機関にロシアの政府関係者が出入りしていたこと、ロドチェンコフ自身がドーピングをしている選手を1回クリーンにした状態で尿を集めました。そしてその尿をオリンピック機関に行われた尿検査の尿と入れ替えたのでした。
この事実をニューヨークタイムズの記者の前で証言し、この記事が発表されたのでした。これを受けてWADAはさらに捜査をします。そしてロシア選手のリオオリンピック出場を停止することを発表したりしました。
しかしもちろんロシアは否定しています。プーチン大統領自身もスポーツが政治利用されていると声明を出しました。
ロドチェンコフはこの証言後、証人保護プログラムを受けて姿を消しました。もちろん今も保護されて怒火かで暮らしています。彼が命をかけてまで暴いたこの事実が、この先のスポーツの祭典をかえるきっかけになっていくことを願いたいです。